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債務整理(過払い金)の裁判例をご紹介します。「悪意の受益者」に関する判例。

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債務整理大阪TOP>>債務整理(過払い金)判例集 >>H19.7.17最高裁三小判決

判例全文

主文

上告代理人井上元,同中井洋恵の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

1 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 被上告人は,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)3条所定の登録を受けた貸金業者である。
 (2) 上告人は,被上告人との間で,平成元年4月25日ころ,クレジットカードを利用して被上告人から繰り返し金銭の借入れを受けることができる旨,返済日は毎月27日とし,返済方法は元利均等分割返済方式とする旨の条項を含むクレジットカード会員契約(以下「本件カード契約」という。)を締結した。
  上記借入れの約定利率は,利息制限法1条1項所定の制限利率(以下,単に「制限利率」という。)を超過している。
 (3) 被上告人は,上告人に対し,本件カード契約に基づき,第1審判決別紙計算書(ただし,原判決による訂正後のもの。以下同じ。)の「年月日」欄記載の各年月日に「借入金額」欄記載の各金員を貸し付け(以下,これらの各貸付けを「本件各貸付け」と総称する。),上告人は,被上告に対し,同計算書の「年月日」欄記載の各年月日に「返済金額」欄記載の各金員を支払った(以下,これらの各支払を「本件各弁済」と総称し,本件カード契約に基づく全体としての取引を「本件取引」という。)。
 (4) 被上告人は,本件各弁済に貸金業法43条1項の規定の適用がある旨の主張立証をすることなく,本件各弁済の弁済期のうち,利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分(以下「制限超過部分」という。)をその当時存在する他の貸金債権に充当することを前提とした計算書を提出している。この計算書では,貸金債権が存在することになっているが,被上告人は,本訴提起前の平成17年1月12日に上告人代理人弁護士に対し,10万6622円の過払金があると届け出ている(以下「本件届出」という。)。

 

2 本件は,上告人が,被上告人に対し,本件各弁済の弁済金のうち,制限超過部分を元本に充当すると,第1審判決別紙原告計算書のとおり過払金が発生しており,かつ,被上告人は上記過払金の受領が法律上の原因を欠くものであることを知っていたとして,不当利得返還請求権に基づき,過払金239万6557円及び民法704条前段所定の法定利息(以下,単に「法定利息」という。)1万3558円並びに本件取引の終了の日以降の上記過払金に対する年5分の割合による法定利息又は遅延損害金の支払を求める事案である。

 

3 前記事実関係等の下において,第1審は,過払金及び法定利息の合計額237万0127円並びに過払金に対する法定利息又は遅延損害金の支払を求める限度で上告人の請求を認容し,その余の請求を棄却した。被上告人が,第1審判決中被上告人敗訴部分を不服として控訴したところ,原審は,本件取引のうち平成3年5月27日までの取引は一体をなすものであり,同日までの本件各弁済によって発生した不当利得返還請求権については,それまでに金額が確定し権利行使が可能になったものということができるから,同日から10年の経過により,時効消滅しているとしてこれを認めず,同日以降の最初の貸付日である平成6年5月4日以降の本件取引について,次のとおり判断して,上告人の請求を過払金19万9964円及びこれに対する本件届出の日以降の法定利息の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却した。
 (1) 本件取引により発生する貸金債権と不当利得返還請求権の清算については,本件各貸付けは合算されて1個の貸付けとなり,弁済は,その1個の債権に対するものとして扱い,過払金が生じた場合は不当利得返還請求権が発生し,その後貸付けがされた場合には,その貸金債権と不当利得返還請求権が当然に差引計算されるという上告人主張の計算方法によるというのが当事者の合理的意思であると認められる。
 (2) 被上告人が本件各貸付けによる貸金債権が別個のものであることを前提とする充当計算をしてきたことからすると,被上告人が貸金債権が残存すると考えることにも相当の理由があり,被上告人が本件届出において過払金の発生を自認するまでは悪意の受益者であると認めることはできない。

 

4 しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
  貸金業者が借主に対して制限利率を超過した約定利率で貸付けを行った場合,貸金業者は,貸金業法43条1項が適用される場合に限り,制限超過部分を有効な利息の債務の弁済として受領することができるにとどまり,同規定の適用がない場合には,制限超過部分は,貸付金の残元本があればこれに充当され,残元本が完済になった後の過払金は不当利得として借主に返還すべきものであることを十分に認識しているものというべきである。そうすると,貸金業者が制限超過部分の利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。
 これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,貸金業者である被上告人は,制限利率を超過する約定利率で上告人に対して本件各貸付けを行い,制限超過部分を含む本件各弁済の弁済金を受領したことが明らかであるところ,被上告人は,本訴において貸金業法43条1項の適用があることについて主張立証せず,本件各弁済の弁済金のうち,制限超過部分をその当時存在する他の貸金債権に充当することを前提とした計算書を提出しているのであるから,上記各弁済金を受領した時点において貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有していたとの主張をしているとはいえず,上記特段の事情を論ずる余地もないというほかない。被上告人が受領した弁済金について本件各貸付けによる貸金債権が別個のものであることを前提とする充当計算をしてきたとしても,それによって上記判断が左右されることはない。したがって,本件各弁済によって過払金が生じていれば,被上告人は上告人に対し,悪意の受益者として法定利息を付してこれを返還すべき義務を負うものというべきであるから,原審の上記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

5 以上によれば,論旨は理由があり,原判決中,上告人の敗訴部分のうち,平成6年5月4日以降の本件取引に係る不当利得返還請求に関する部分は破棄を免れない。そして,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 なお,平成6年5月4日より前の本件取引に係る不当利得返還請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,破棄することとする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

コメント

特段の事情を論じる余地もないとして「悪意の受益者」性を推定した事例です。


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代 表:弁護士若林勇士(大阪弁護士会所属)

弁護士若林勇士の略歴
・昭和53年 京都市に生まれる
・平成14年 弁護士登録
 以降,数々の債務整理案件に関わり,多重債務問題を解決しています。

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